2016/03/27

シノワズリを掘り出す

土日の朝は時差ボケを利用して朝から蚤の市に出かける。
少し日が長くなって、ポップアップの蚤の市も活気が出てきた。

オベルカンフの蚤の市で、デザインと値段に納得がいくテリーヌを見つけた。
投げ売りの箱の中から。

四角い形というのがちょっと珍しい気がするし、中がいい感じにくたびれている。
La Bourguignonneというメーカー。

この蚤の市は投げ売り箱の中に面白いものあり。

気泡が入ってゆらゆらとした古いガラスのフラスコ。
管を繋ぐための細い突出しも割れずに残っている。
上部の口の縁が不均一で、愛嬌がある。
花を挿すのに最適だし、ぼんやりと撫でつつ眺めるだけでも楽しい。

古いものに惹かれるのは、歪さがあるからだろう。

銅らしきお玉。
元々はセットだったのだと思う。
お玉としては深すぎて使いにくいが、油を熱するには丁度良さそう。

ドロドロの白い皿を6枚、セットで押し付けられた。
4枚はカビだらけで、洗っても染み込んだ青黒いシミが取れず、廃品回収コーナー行き。
1枚はとりあえず滞在先の食器に加えておいた。
残りがこのサルグミンヌ。

1920年代から半ばくらい。

別のポップアップ蚤の市で、初聖体拝受の記念品のグラス。
エナメルのいかにも手描きな絵がいい。
金の文字も。

ヴァンヴに行ったときはかなりな雨。
寒いし、薄暗いし、売り手たちも荒んでいるしで、出会いなし。
唯一心ひかれた30cmくらいの不細工な木彫りの赤子は、200ユーロということで諦めた。
初め天使かと思ったが、あのポーズはキリスト誕生の場面だったに違いない。
寝た姿勢で裏に削られた跡があった。
本来はマリアやヨセフやロバと共にクリスマス飾りの一部だったのだろう。
綺麗なお顔立ちじゃないところが良かった。

で、帰りに寄ったポップアップのブロカントがまた、雨で開店休業状態。
5スタンドくらいしか出ていない。
それでも何か買わずには気が収まらず、感じの良い売主のスタンドで目に留まった小さい器を購入。
イギリスの村の景色。

エノク・ウェッジウッドは有名なウェッジウッドの親戚筋の別会社で、最終的にはウェッジウッドグループに吸収されたそうな。
これは1960年代のものらしい。
フィンガーボールみたいな大きさと深さ。

サルグミンヌの花リムスープ皿。
バックスタンプがないが、一緒に売られていたスタンプありのものと全く同じ色と形状だったから間違いないだろう。
1920年代頃。
このシリーズの皿は人気だったのか、よく見かける。

ウィローパターンに興味があり、古いものを欲しいなと思っていた。
ちょうど目に留まったこれ。
お決まりの2羽の鳩がいないので調べたところ、元々の模様にはなかったという記述があった。
鳩は後から加えられたものであるらしい。

つるっとした裏や肌質は1800年代初期のクレイユ・エ・モントローと似ているので、同じ年代と推測。

エタンプ総合病院の名前が入ったスープ皿2枚。
いかにも業務用で頑強。重い。
フォレストグリーンのステンシル文字や縁のレリーフに愛嬌がある。

リモージュのAluminiteというメーカー製の耐熱皿。
検索してみると、同じデザインのロゴ違いがある。
メーカーは1958年に買収されているから、それ以前のもの。

13区で開催されていたポップアップのブロカント。
雨続きの中で晴れた日曜は、朝から賑わっていた。

またもブルーウィロー。
中国に憧れて、でもそんなに薄くはできなくて、せめて模様だけでも中国風にしたヨーロッパの器の面白さ。
自分の中のこの流行はもうしばらく続きそうだ。

側面中央に金色の線が2本。

今回、深さのある器をリクエストされていたが、アンティークではあまり見つからない。
やっと掘り出したボール。
元々は何用なのだろう?

この売り手のおばちゃんは感じがよく、中国や日本の図柄の器ばかりを扱っていた。
中国製や日本製らしきものも。
「木の台にのせて飾ると素敵よー」と言って、実際にそうやって恭しく見せていたが、家では普通に和や中華の汁ものを入れて使っております。

イギリスのSemi China。
1800年代のようだ。
磁器としての技術がまだ完成されていない、ポテっとした肌。

妙にペタっと薄いのと小さいところが気になり、購入。

イギリスのアダムス。
このマークは1914~1940年だそう。

カトラリーにも出会いあり。
クリストフルの純銀ナイフは現行のマルリーで新しいもの。
小さ目のサイズで刃もカケがなく、ナイフとして実用できる。
初め、同じ柄よりも違うのを色々と揃えようと思って1本だけ買ったが、とはいえナイフの状態の良いものでバラ売りしてくれることはマレと思い直し、戻って2本追加。

奥のスプーンは頭でっかちなのがいい。

右のデザートナイフはナポレオン3世期のものだと、売り手のおじさんは言う。
優美だけど無骨なところもある装飾が気に入った。
ググると、Cailar Bayardという1848年から1934年まであったメーカーだそうだ。

右から2本目は何用だろう?
柔らかいチーズに使おうと思っている。
エルキューイの緻密さが好きだ。

クリストフルのスプーンたち。
右はアールヌーヴォーなロータス。
フォークもあればよかったのに。

左は植物とリボンの組み合わせ。
マークを見ると1935年まで使われたものが付いている。
雰囲気はナポレオン3世期のナイフと近いような。

色々な装飾があるので、その時グっと来るものを買う。
完全にシンプルなものより、装飾があり、そこに時代が見えるものが楽しい。
器は白だけ、カトラリーはフィデリオという風にきっぱりと決められる人に憧れつつ、気になるものをバラバラに買っている。
自分が気になって揃えたものなのだから、何かしらの統一感があるはずだと信じて。

2016/03/24

朝食をも無駄にすべからず

ポワラーヌのリンゴパイ。
凝縮感のある生地に生のリンゴを入れて焼いた様子。
半溶けのザラメがそそる。
フレッシュさの残るリンゴにはこの生地が合うね。

昼ごはんは時間がないことが多いけど、朝はパリにいることを満喫したい。
各種パンを食べるいい機会だ。

寒くて入ったカフェ。
日曜の朝食を取りつつ新聞を読んだり、話したりするご近所さんたち。
こういう店で食べるクロワッサンがバカにできない。
握ったら小さくなりそうな、空気を含んだ軽い層にバターの香り。

ジェラール・ミュロのパンが好きだ。
店の作りを含めたビジュアルはなんだかあか抜けないのだけど、味が好み。
クロワッサンもハズさない。

ポワラーヌのパンにラクレットとピレネー・ド・シェーブルでチーズサンドイッチ。
フライパンを使ってバターでカリっと焼く。
チーズサンドはもう、家でもパリでも定番。

わざわざパンを買いに行くことはないのだけど、出先で近くの美味しいパン屋や菓子屋を探しはする。
ブレ・シュクレも好きな店だ。

雨がちの寒い週だった。
前の公園では桜のような小さい花が満開だったけれども。

ブレ・シュクレのパン・オ・ショコラ。
やっぱり美味しい。
ガシっと硬いが詰まりすぎていない。

ガトーバスクも良かった。
また行くことがあったら買うこと。

オデオン近くにあるウィーン風菓子屋。
素朴で、愛想のないおばちゃんたちが仕切っている。
喫茶スペースもある。

キャロットケーキって、パリではあまり見かけない気がして買ってみた。
家で作りそうなパウンドケーキに人参が入っただけ。
でも、そういうのをもそもそと食べるのが良い時もある。

ジェラール・ミュロのパン・オ・ショコラ。
間違いない。

ジェラール・ミュロのバゲットにベイユヴェールのバターと農家直送シェーブル・フレをこんもり。
茹で卵は手で割るとインスタで習った。

パセリのオムレツとチコリのサラダ。

機内食としては、割ったバゲットにシェーブル・フレとラスパイユの肉屋のハムを挟んだものを持参。
美味しいものだけで構成されたサンドイッチ。

2016/03/23

出張自炊ライフ

滞在先に着いて荷物を置き、すぐに出る。
ポワラーヌで田舎パンと翌日の朝食を買い、ボン・マルシェでベイユヴェールのバター(Doux)とボルディエのクリームと牛肉を買い、花屋に寄り、近所のビオスーパーで野菜とワインと水を買う。

土曜の夜に束で売られている花は残り物ばかり。
妥協策で特別扱いの大きく長いバラを1本。
でもこれがさすがに元気よく、2週間近い滞在の間ずっと綺麗に咲き続けていた。

ユベール・ヴェルドローのブルゴーニュ、ピノ・ノワール 2014。

牛肉は行列を待てず、パックに入っているのを買ったらイマイチだった。

翌日曜日はラスパイユのビオ市でまとめ買い。

鶏肉は羽も付いてる。
その処理をしていたら、これって手羽なのでは?と。
ならば焼いて食べるよりスープにしたほうが活きるだろう。

ポロ葱と長時間煮込んだら、良い出汁が出た。
外でのびのび育ったと推測される締まった肉は、ホロホロに柔らかくなっても出がらし感がない。

例年より寒くて、雪や雹も降る変な天気。
温かいスープが癒しだ。

最後はスパイスを加えて。

骨付き仔牛肉はソテーして、パセリと芽キャベツを入れたクリームソースで。

パリ在住食いしん坊友達オススメのマーシュは手軽に食べられる青菜で、今回の滞在中によく食べた。

マルシェでなんだこりゃ?と思ったら根セロリだった。
自分で料理するのは初めて。
かなり硬くて、切れ味の悪い包丁では難儀した。

根セロリとジャガイモとフェンネル(株)のグラタン。
バターでニンニクを香り出ししたところに鶏出汁とクリームを合わせて煮詰めたものを注ぎ、ラクレットチーズをのせて焼いた。

根セロリは火の通りも悪く、先に少し煮込んでおけばよかった。
小さめのを買ったのになかなかなくならなくて、この後は根セロリの消費に努めるハメになる。

ボルディエというブランドにそそられて買ってみたクリーム。
でも、前回ビオスーパーで買ったもののほうが黄色で酸味やコクもあり美味しかった。

ラスパイユで買った牛肉。
水島シェフの本を読んだばかりなので、弱火焼き。
最後に強火で色を付けるのを、もっと長くやるべきであった。

ソテーにしたケールは葉が頑強で、なかなか柔らかくならず。
なるほどね。
日本の家の近所では手に入らない野菜を試すのが楽しい。

残ったのを持って帰るのを嫌って調味料は極力買わないようにしていたが、さすがに酸味がレモン汁だけというわけにもいかなくなり、スパイシーなものの禁断症状も出てきて、酢とクミンなどが入ったチリスパイスミックスを購入。

蜂蜜の酢は、ほんのり蜂蜜の香りがするが甘くはない。


自宅には買ったりもらったりした調味料がたくさんあって、1つ1つに向き合えずにいる。
パリでオリーブオイルとバター、塩、レモン汁、黒胡椒(今回持参)だけで調理したのは、素材の味をよく味わうという意味でも有意義だった。
仕方なく、とにかくより少なく、そこに何かを足すということになった時、自分にとって重要な風味というのを認識した。
普段どれだけ無意味に要素を増やしていることか。

春は仔羊の季節。
ソテーしてカリカリニンニクとスパイスのオイルをかけ、パセリとブラッドオレンジのサラダを添えた。
パセリでなくコリアンダーだったらエスニックさが増したのに、季節柄良いものがなかった。

マルシェ・サン・ジェルマンの中にあるワイン屋でオススメされて買った赤。
Domaine de la TacheのGuillamy n'est pas un Saint。
シラー。
羊によく合った。

このワイン屋はビオを扱っていて、角打ちカウンターもある。
Domaine de Villargeauの白をいただく。
ワインを買うついでに1杯やって、店主と雑談して帰る人が多いようだ。
フランス語ができたらなあと思うのは、こういう時。

フェンネルの葉と茎のアーリオ・オーリオ。
無駄に健康志向を発揮して全粒粉スパゲティを買った自分が憎い。
長いパスタは絶対に普通のがいい。

マルシェ・サン・ジェルマンの肉屋もなかなかいい。
居合せるのはいつもご高齢な方々。
鶏を買おうと思って寄ったら、ウサギの切り身があり、ピカピカで美味しそう。

フランス語のみだけど親切で気の良いおじさんは背骨を切ってくれた。
ワインの袋を見て、「お、飲むんだな」と身振りを交えて言い、ニヤリとしながら肉を手渡す。

ウサギも半分はスープに。
ポワローと蕪と。
鶏と似た質感で、少し野性味がある。

滞在半分を過ぎて、花を追加。
一抱えのラナンキュラスが15ユーロって、安いよね。
花瓶では入りきらず、シャンパンクーラーに。

ウサギスープ2杯目は、ニンニクスパイスオイルを加えて。

同じワイン屋で買ったコルシカの赤。
クロ・フォルネリのカ・ロブ・ダンジュ 2013。
最後の1本だった。

コルシカの赤ワインいいね。

ウサギの半分はソテーして、赤ワインソースで。
ウサギ肉、やっぱり好きだ。

ヘラでは潰し切らなかった根セロリとジャガイモのピュレ添え。
洋梨とマーシュのサラダも。

あと数日で帰るのに、塩を床にぶちまけた。
塩なしではどうにもならないけど、この家に置いてある塩は納得がいかない。
仕方なく買う。
荷物にはなるが、家でもあって困るものじゃない。

ラスパイユの肉屋で美味しそうだったハム。
芽キャベツのソテーと。

チコリの半分はオリーブオイル&塩&レモン汁で、残りはラクレットチーズをのせてオーブン焼きで。

出発前の食事は鶏のニンニクバターレモンソース。
金柑とマーシュのサラダと。


料理は気晴らしになるし、調理時間を入れても家飯のほうが短時間で済む。
何かやりながら、合間に料理したり食べたりもできる。
部屋での作業がある出張にはもってこいだ。
もうあの狭いホテル滞在には戻れない。
Airbnbがずっと続きますように。